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トゥーラ年代記

第7章の 33 護衛家業の3


 ’トゥーラの外交には信念が無い。’諍いは、そんな言葉から
始まる。
そして、そんなトゥーラに攻められ、属州となったラーダには、
男が居ない、と続く。
なぜなら、信念無き国に対抗できないのは、その国の男どもに
玉が無かったからだ、と。
そして、乱闘で幕を閉じる。ラーダと国境を接する騎士団領の酒場で、
よく見かける光景だ。・・と、今は騎士公国か。・・・ま、よくある光景だ。

 だがその日の晩は、様子が違った。
外交に信念が無い、のくだりで、反論が出たのだ。
通常、ラーダ人を揶揄するための枕詞だ。そこで反撃されると思って
いなかった、言いだしっぺの野郎は、ポカーンと間抜けな面を晒している。
議論に参加したのは、護衛対象だった。

 理論整然と発せられるその意見に、相手はたじたじになった。
なぜ、トゥーラが八方美人的外交をなすのか。
その理由とメリットが、わかりやすい言葉で説明されていく。
にやついて聞いてる者、うなずいて聞いてる者、周りの反応はさまざまだ。
が、1つだけ確かな事がある。普段なら、言いだしっぺの野郎に有利に働く
場の雰囲気が、今日に限っては、反論者に有利に働いているのだ。

 窮地に立たされた、言いだしっぺは、口汚く罵った。
「このオカマ野郎。てめえのp−に、p−をぶち込んでやろうか?!」
確かに、好き者ならほっとかないほど、作りの良い顔だが・・・
相手の人数考えて煽れよ、このたこは(−−)
重い腰を上げようとした時、護衛対象から反撃が飛び出した。
「あなたのp−では、うさぎさえ満足しませんよ。」
どっと場内が沸いた。

 切れた言いだしっぺが、酒瓶を逆手ににぎる。
俺が腰を浮かすより早く、その肩を制止した男が居た。
ディアンだ。いつの間にか、男に歩み寄っていたらしい。
男が、無理にその手を、振り払おうとする。皆、弾き飛ばされるディアンを
想像した。・・・が、ディアンは易々とその手をかわし、立ちあがろうとした
男の首筋を抑え、椅子から動けなくした。
この青瓢箪、なかなかやる。護身術の心得が、あるのか。

 言いだしっぺのつれどもが、醜悪な面に怒りの表情を浮かべ、立ち
上がった。
どうあっても、食後の運動がしたいらしい。
俺は、おもむろに伸びを打ちながら、立ち上がった。
その間につれは、ディアンの斜め後ろに移動し、援護できる体勢を取る。
犬っころは、護衛対象をさりげなく後ろに庇った。

 「さて、・・・いいぜ。遊びたいやつは加わんな。このショージ様の熱い
拳を、た〜っぷりと、味あわせてや・・・
無粋なやつらだ。俺の名乗りを邪魔して、殴りかかってきやがった。
楽しみたい所だが、今は仕事中だ。護衛対象は犬っころに任せたとしても、
ディアンを、確実に喧騒から遠ざけないとまずい。
前に居たやつのわき腹にフックを、後ろから襲ってきた奴に、肘を叩き込んだ
所で、犬っころが、出入口から退避するのが視界に入った。

 目で、ディアンを探す。階段の途中から、連れが手を振るのが見えた。
青瓢箪も、一緒だ。
ほっとして、出口を探そうとした所で、頭に一発もらった。かっと、血が上る。
なじみのある鉄の味が、口に広がった。・・・くそう、どいつだ?!
言いだしっぺが酒瓶を持って、にやついてやがった。・・・てめぇか!

 酒瓶が割れないように加減して殴ったらしい。酒瓶を順手に戻して
勝ち誇ったように、酒を煽ってやがる。
・・・この呑み助メ(−−) その意地汚さが、命取りだ。
乱闘は店中に広がっており、そろそろずらかるべき時だった。
後5分もすれば、衛士どもが突入してくるだろう。・・・が、
俺の目には、言いだしっぺの野郎しか、映っていなかった。


次章に続く


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