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トゥーラ年代記

第7章の 35 護衛家業の4


「・・・こっちだ。無駄口をたたくなよ。」
衛兵の声が、頭に響く。
 酒と、その入れ物で殴られたせいで、頭が痛い。
不覚にも酒場の乱闘で逃げそこない、衛兵に捕縛されて
しまったのだ。
連れが迎えにでも来たと思ったのだが、どうやら違うらしい。
なんだか城の様な建物に、引っ張っていかれた。

「派手に暴れたそうだな。」
 書類から目を上げず、そいつは聞いてきた。
室内に居るのは、そいつとその横につっ立ってる、女みたいに
髪の長い奴だけだ。
「売られた喧嘩は、買う主義でね。」
 頭が痛いせいで、どうしても口調が不機嫌になる。
俺を引っ立ててきた衛兵の顔が、目に見えて青ざめた。
衛兵が何か言おうとして、口をあけ、・・・閉じた。
どうやら、この部屋の人物は、そこそこ権力を握っているらしい。
衛兵が許可なく発言できないところを見ると、騎士の中でも
上位に、位置するのだろう。

 あいにくと、俺には階級なんぞ関係ない。
衛兵には気の毒だが、機嫌を損ねようが知ったこっちゃない。
酒場で暴れた程度で、上級騎士が出張って来る筈がないのだ。
こいつが用があるとすれば、護衛対象のほうだろう。
・・・居場所を聞きだそうってところか。
いずれにせよ、これ以上状況が悪化するとは思えない。
突っ張り通そうと、腹を決めた。


「お会いできて光栄です、陛下。」
 部屋に入ってきた人物が、そういった。・・・護衛対象だ。
頭の中で、吃驚マークが踊りまわる。
護衛対象がここに来たのにも驚いたが、・・・陛下と来たもんだ。
すると、こいつがルードヴィッヒか?
・・・無用心な事、この上ない。護衛が、この髪の長い奴一人
だけか?
俺が暗殺者なら、今頃無難に任務を終えて一服始めてるぞ?

 そんなことを考えていると、机の男、ルードヴィッヒが口を開いた。
「こちらこそ、会えて嬉しく思いますよ、外務卿。あなたの辣腕には、
ずいぶんと泣かされましたのでね。」
「ご冗談を^^ 私の力なぞ微々たるものです。今回は、騎士公国の
繁栄をこの目で見、学ぼうと思いやってまいりました。」
 このぼんぼんが外務卿?! ・・・見覚えあるはずだ。国王と同じ
顔のつくりじゃないか(−−)

 自分の記憶力の悪さに、心中で悪態をついていると、ぼんぼ・・・
外務卿が、再びしゃべり始めた。
「と、言うのは兄を説得する言い訳で、実際は城を離れ、休暇を
楽しむ為に来ました^^ ・・・すでに、ご迷惑をおかけしております^^;」
 ・・・俺のことか(−−)
「お気になさらずに^^ミレル卿。 オフと言う事であれば、派手な監視は
付けません。が、今回の事もありますので、それとなく国内に通知を
出しておきます。今後は、フライ屋の屋号を、名乗って下さい。」
「承知いたしました。ご配慮、ありがとうございます。」

 そのまま俺は、放免され、護衛対象と共に宿に帰ったのだが、
道中、連れと護衛対象に、さんざんからかわれた。
曰く、’どっちが護衛か、判りませんねー^^’だの、
’情けなー、・・・俺が雇い主なら、金払い渋るなー’だの。
・・・うるせぇよ(TT)


次章に続く


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