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僕の同居人


あのころ、・・・世界はなんとなく過ぎていて、
僕はなんとなく生きていた。
君の足音が廊下に響いた。
カッカッカッカ、緊張で爪を出したまま走り抜けるキミ。
トレイに載せて廊下に置いた食べ物を、
僕が部屋に入って戸を閉めるまで、取りに来なかったね。
少しずつキミが食べ物を持ち去る距離が短くなり、
初めて君の毛皮に触った日、緊張と興奮で僕の手は震えていた。
初めて君が僕の部屋で眠った日、君に信頼された喜びで、
僕の頬は緩みっぱなしだった。
そして・・・、僕はキミの同居人、蚤の襲撃を受けた。
それが、許可証代わりかな? その日から僕らは同じベットで
眠る、大切なパートナーになったね。
朝が苦手な僕を、よく君は起こしてくれたよね。
キミのざらざらの舌で、頬を舐められるのが好きだった。
君は、僕の左脇の下が好みだったね。
1人に戻ってからも、左側を空ける癖が取れずに、
寂しい思いをしたよ。
引越しの日、キミに黙って部屋を出た。
今も後悔してる。でも、キミの縄張はあそこだし、
キミには他に眠る部屋が有ったしね。

今日、キミによく似た猫を見たよ。その子は同居人に看取られて、
天国に行っちゃった。
キミも今ごろは、天国だね。食べ物で不自由して無いかい?
僕みたいに、塩焼きを出す間抜けはいないよね?
珈琲を、飲まそうとする奴も・・・
天国の同居人は決まったかい?
もう、蛇を誘って、部屋に連れ込んじゃ駄目だよ?
彼を説得して、部屋から出て行ってもらうのに、
ずいぶん時間が掛かったんだから・・・

じゃあね、僕の同居人。また、会いたくなったら手紙を書くね。


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