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5王国ー3


推移

 ブッシャーの目的が、大陸に覇を、唱える事であるならば、
このまま、おとなしくしてはいないだろう。
会合解散後、各王家は軍備を増強し、国境の警備を厳重にした。
大陸南部の各諸国も、事態の推移が不明な為、公式・非公式を問わず、
使者を派遣し、情報収集に努めていた。

 フラン王国にとって、事態は深刻であった。
シン王国との良好な関係から、ラーン港に依存した貿易体制であったため、
ブッシャーに港を押さえられると、貿易利潤が激減する。
しかも、会議の席で激しく対立した為、関係修復は、簡単には行かないだろう。
ライース王国に頭を下げ、屈辱的な関係を結ぶか、あるいは、あくまで敵対し
武力に、訴えるのか・・・。
シン島に発足したと言う、亡命政権の規模を、早急に知る必要があった。

 大儀だけでは、領土は増えない。しかしながら、大儀無き武の行使は、
非常に危うい。その脆すぎる基盤ゆえ、自らも武によって倒され得るのだ。
ブッシャーは、捕らえたシンの国王夫妻を、処刑するだろうか?
それが、目下のところ、各王家の最大の関心事だった。
亡命政権発足が事実であれば、国王の処刑実行は、周辺各国にこれ以上ない
侵攻の名目を与えることとなる。
5王国内の王家だけでなく、南方諸国にも、その口実を与えてしまうのだ。

 逆に、あくまで処刑を断行するならば、名目を得た各国に、対抗できるだけの
手はずを整えた、と言うことになる。
水面下での情報収集と、’非公式な’各国大使の往来で、内陸交通路の
宿場町は、常にない賑わいを見せていた。

 一方、海上交通はと言うと、ラーン港周辺は警備が厳しく、それ以外の海域では、
海賊船が出ると言う、もっぱらの噂だった。
おそらく海賊船の大半は、ライースの私略船なのだろう。
ラーンに代わる、大型港を作らせない為の、措置だと思われる。
危険度と隠密性の維持から、各国の使者は、陸上移動手段を多用していた。

 ここから船に乗れれば、移動期間は、大幅に短縮されるのに・・・。
フラン王国の特使は、海に沈む夕日を見つめ、ため息をついた。
これから大陸を、ほぼ横断する形で、シン島近くに出、さらに島に渡してくれる船を
捜さねばならない。
ライースの目が光ってるので、船を捜すのも一苦労だろう。
旅程の困難さを思うと、ため息しか出てこなかった。





次章に続く


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