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か⇔わらない


 悪夢を見た朝、男は死んでいた。
死んだ事に気が付かず、いつものように起きだした。

重い手足、働かない頭、充血した目。
いつもと同じ、朝だった。

飲み過ぎたか・・・、2時間もすれば、意識も起きるさ。
コーヒーをがぶ飲みし、男は出かけた。

いつもの会社、いつもの仕事。
いつもの日々が過ぎ去り、10年が経った。

男は結婚することになった。
上司の勧める見合い話。断る理由も無かった。

家庭内は、まずまず円満。
男は寡黙で、妻の愚痴を黙って聞いた。

いつもの営業中、男は刺された。
通り魔だった。華麗に避けるには、男は重すぎた。

ああ、死んじまうのか。
そう思ったとき、男の体に変化がおきた。

着ていた服がフワリと落ちて、
男の体は、煙と消えた。

男は、死んでいたことを思い出した。
妻が不憫に思え、伝えようと思った。

しかし、死んだことを思い出した男の声は、
妻には、届かなかった。

自分自身なら聞き取れるかもしれない。
男は時を遡り、自分自身に会うことにした。


男がどうなったか、誰も知らない。
誰も時を遡れないからだ。

おわり


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