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戦国伝

「立て! 立って剣を取れ! 稽古がしたいと申したは、己で
あろうが!!」
 4〜5歳の子を激しく打ち据えての台詞である。
たまらず、乳母が、かばいに入った。
「おやめくださいませ! 皇子様は、まだお子様ではありませぬか!」
 そう言うと、その手に子供をかばい、キっと男をにらみ上げた。
子供は、その腕の中で、ほっとした表情を浮かべ、男を見上げている。
「黙れ!!」
大地を揺るがすかのごとき、大音声である。
「己は、何者ぞ! このものの守護神か?! 戦場でもそうやって
敵兵に命乞いをするのか?! 
己もじゃ!! 戦場に乳母はおらぬぞ?!左様な様で、この国が
継げるか?!」
 台詞の後半は、子供に対してである。どうやら、この子は、男の
世継ぎであるらしい。
「己が、手に持つは、何ぞ?!答えてみよ!!」
「・・・剣です」
 子供が答える。
「聞こえぬわ!!」
「! 剣です!! 父上・・・」
 傷が痛むのか、それとも、認めてもらえぬのが悔しいのか、
少年は涙目になっている。
「・・・それはの、人殺しの道具ぞ。」
男は声のトーンを下げ、静かに語り始めた。
「他者の命を奪う道具ぞ。人を殺め、その血を浴び、他人の人生を
終わらせる獲物ぞ。」
男の声に誇張は無い。
「剣を持つ以上、女も子供も無い、あるのは命のやり取りだけじゃ。
ゆえに! ・・・ゆえに、甘えは許さぬ。己が身を守れぬ者に、何ゆえ
国が守れる? ・・・、その刃は、己だけのものではない。数百・数千の
命の束と知れ!!」

・・・少年は、二の腕で顔を、ごしごしと拭った。
そして、乳母をそっと押しやると、黙って剣を拾った。
「いざ!、お願いします!!」
「来い!」

庭園には再び、剣戟の音と気合のこもった声が響き渡った。


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