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トゥーラ年代記

序章

「この国に王は2人も要らない」
そう言って、父王を嘲笑(わら)いながら殺した。



 現王、リュ−ド1世にまつわる、噂である。
彼が即位して12年、トゥーラ王国は、確実に繁栄していた。

 目立った混乱もなく、父王の後を継ぎ、商業国家として、成功させたその手腕は、
(政権奪取の噂はともかくとして、)統治者として、十分な賞賛に値するだろう。
 現在も、北のノーラ帝国、西のハンニバル皇帝領、東のノイン騎士公国に囲まれ、
軍事的に、決して有利とはいえない状況であるが、政権交代当時の軍事的緊張は、
如何ほどのものであったろうか・・・。
 現在、繁栄を享受できる幸せを、国民はもっと感謝するべきかもしれない。

・・・たとえ肉親殺しの為政者であったととしても・・・だ。

 現王の噂はまたの機会に譲るとして、(その手の話も嫌いではないのだが、苦笑)
本日お話するのは、メッセンジャーと呼ばれる、この国独自の職業について、だ。

現在でこそ、傭兵と区別され、誇りをもって任に当たっているが、発足当時は、
野盗とかわらない者たちもいて、人々から胡散臭いものとして、見られていた。

これは、その中の1人、ミウ・シャーク(仮名)に聞いた話だ。


次章に続く。


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