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トゥーラ年代記

第1章

野盗の転職

『リュ−さんがよ、・・・』と、彼は話し出した。
懐かしそうに目を細めながら・・・



 あの頃は、凄かったさ、(笑)メッセンジャーの5〜6人も集まれば、
殺し合いがおきるんじゃないかって感じで、部屋ん中、ピーンって
張り詰めてたもんだ。
 みんな、傭兵って名乗っちゃいるが、6割方は野盗だったな。
・・・見た顔もチラホラあったしな(笑)
(筆者注:彼も野盗の頭目だったとの噂がある)

 そんな連中を部屋に集めてよ、リュ−さんが、こう、かましやがった。
『俺が、この国の王だ!』・・・ってな。
 一瞬の沈黙、エ〜ンド大・爆・笑・ってやつさ。だ〜れも本気にゃしなかった。
 あんまり笑いが消えないんでよ、最後にゃリュ−さんも一緒になって
笑ってたもんなあ(笑)。・・・それからよ、リュ−さんがこう言い出した。
『俺が、国王か、それともその使いか、そんな事はどうでも良い。
肝心なのは、仕事と金、これを用意できる、って事だ』


 ざわついてた室内が、静かになるまで待って、彼は次の言葉をつむいだ。
はっきり言って、今の時期に親父が、逝っちまったのは、まずかった、
親殺しの簒奪者を誅するってお題目で、騎士団領のやつらは、この国に
乗り込んでくるだろう。(著者注:その頃はまだ、ノイン騎士公国は、
1つの国ではなく、11の騎士団領に分かれた独立統治領だった)
それを防ぐには、力が要る。・・・それも、とびっきり強力なやつが、だ。」

「力ってえのは、軍隊の事かい?国王さんよお(笑)」
野次が飛ぶ、それを片手で制して、
それもある、だが今、最も必要なのは、情報だ」
「情報?」
「そう、情報だ。たとえば、隣国で小麦が不作だとする、どうすりゃ儲かる?」
「簡単だあ〜、小麦を買い占めて売っちまえばいいのさ」
得意そうに答える野盗
「その通り!、ただし、・・・」
「・・・ただし?」
「他のやつより早く、だ」
どっと沸く笑い
「そりゃソーダ」、「んだんだ」
「それが、」と、大きな声で場を制し、「・・・情報だ!」と、つなげた。

「諸君たちには、その情報を伝える、役割を担ってもらいたい。・・・なに、
簡単な事だ。メッセージの入った筒を町から町へ届けてもらうだけで良い。
・・・これが仕事だ。」
 隣と相談する者、簡単な内容に、拍子抜けする者、反応はさまざまだ。
「スリルの欲しい者は、」
一呼吸おいて、リュ−さんが続けた。
「軍の密偵をやってもらう事になる、」
目を輝かす者、数名
「ただし、信用できるものに限り、・・・だ。」
ざわつく。室内、
「信用できるかどうかは、メッセンジャーの仕事振りを見て決める。
・・・何か質問は?」
「金はどの位もらえんだ?」
「「兵士の1.5倍を約束しよう。さらに、密偵はその数倍!、メッセンジャーも
仕事次第では、ボーナスを出そう」
「仕事次第って・・・」「やばい事ならって事だろ?」
「それなら慣れてるぜ、俺たちはよお(笑)」
再びざわめく室内




 ・・・結局、すったもんだの挙句、みんなリュ−さんの出した条件を飲む、
って事に決めちまった。
 どう考えたって、隊商の護衛と命のやり取りするより、筒、運ぶほうが
らくだもんな(笑)

 ・・・だけどよ、今にして思えば、あの条件は破格だった。俺たちが、
大半野盗だって事も、ばれてたはずだ。
 おそらく、リュ−さんの目的は、2つ、あったんだ。
国全体を覆う、情報網の確立と、・・・野盗の撲滅!ってな。
 うまいやり方だったと思うぜ。兵士を総動員するより、銭が掛からねえし、
第一、あの時、そんな兵力の余裕は、一切なかったはずだ。

 ・・・リュ−さんは、野盗の掃討と、確実な情報網、そして、いくらかの
余剰兵力を、一気に手に入れたんだ。

 得意の話術と、1.5倍の給料でな(笑)

(著者注:ミウは、リュ−と名乗った人物を本物だと思っているようであったが、
おそらく、側近の1人だと思われる。なぜなら、この時期のリュ−ド1世は、
戴冠式および、諸外国の使節との会談、さらには、(推測だが)権力の
完全掌握の為、寝る間も無いほどの忙しさだっだはずだからだ)


次章に続く。



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