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トゥーラ年代記

第4章

若き王の外交 5

爪と牙

 ・・・力が欲しい。・・・この身に爪と牙があれば、国にあだなす魔物どもを、
城から永久に消し去るものを・・・。
 彼らには、この身が蜜の滴る果実に見えるようだ。毎日毎日、飽きもせず
ご機嫌伺いに来る。・・・いやらしい笑いを、その顔に貼り付けて・・・。

 ・・・兄上は、ご無事だろうか・・・。彼らの目があり、会うことすらかなわない・・・。
 味方は、スコット卿お一人と聞く。・・・お側で、お助けできるなら!
 ・・・いや、考えまい。今は、魔物どものたずなを、引き寄せる事のみ考えよう。
・・・それが、この国の、そして兄上の助けになるのだから・・・。

 兄上は覚えておられるだろうか?あの日の事を。あれほどかわいがられて
おられた、飛翔河馬を、自ら屠った日の事を。
 ・・・きっと1日も忘れずにおられるのだろう・・・。

 ミレルも1日とて、忘れた事はございません!
 始めて見た兄上の涙と、激しい焔のようなお言葉を。
「この獣を見よ!ミレル! これは、弱いから殺されるのだ! 爪も牙も持たず、
柔らかな肌をしているから殺されるのだ! 己が庇護されてると、思っているから、
・・・思っているから殺されるのだ!! 私は強くなる、必ず強くなる!
『この国に王は2人も要らぬ!』必ずこの言の葉を、奴に叩き返してやる!!」




次章に続く


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