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トゥーラ年代記

第5章

国を統べる者 5

終焉

 ・・・その夜、スコット卿・ランカスター卿を交え、今後の(おもに、明日の
戴冠式の)対策を話し合った。
 まだまだ子供だと思っていたミレルも、しっかりとした見解を示し、
スコット卿を喜ばせた。
 スナルには、戴冠式の会場で非をただし、同時に、ランカスター卿の
手の者が、王宮を警備し、料理長を探す手筈となった。

 ・・・あの料理に、料理長の名が無ければ、あるいは、私の大嫌いな
人参が入っていれば、今頃、私は生きてはいなかったろう・・・。
 料理長は、私の好みを知っていて、必ず(大嫌いな!)人参を
入れていたからだ。
 「坊ちゃん、好き嫌いはいけませんよ!」と言って。
 その名が使われている以上、彼は拉致監禁されている、と、見るべき
だろう。立派な証人だ、消される前に確保せねば。
 ・・・不本意ながら、命の恩人でもあるし。

 彼らは、私が消えたと思っているだろう。残された者たちも、国の恥を
公にはしない、と思っているはずだ。・・・そこが狙い目だ。
 公式の場ですべてを進める。スナルに加担した者たちの反撃を
封じ込めるのだ!立場上、騎士も貴族も、『王の暗殺を企てた者』に
加担する訳にはいかないだろう。
 一時の恥が何だ!私には国を守る義務がある。『父王殺しの簒奪者・
重臣逮捕の愚か者』、後世の歴史家は面白おかしく書き立てるだろう。
 だが、国を守り、民の暮らしを守る事は、すべてにおいて優先するのだ。
 誰もが、爪と牙を持てるものではない。ならば! ・・・ならば、それを
持つものは、責任を持たねばならない。 誇りと共に。


・・・余談だが、この時、『膿』を出し切らなかった事で、リュード1世は生涯、
獅子身中の虫たちと戦う羽目になった。
「くっそー、あの時全員ぶち殺しときゃ・・・」
「兄上!」
「へいへい・・・まったくよう」


第1部 完




次章に続く


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