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トゥーラ年代記

第6章の19

 治世2年の終わり、騎士団連合は、竜の誓約に従わなかったとして、
トゥーラの、ラーダ保護者の地位を罷免。ラーダ開放を謳い、約5万
(公称6万)の軍を、ラーダ国境に配置した。
 一方、この事態を予測していたリュード一世は、主力3万を直ちに
派遣、ラーダ守備軍と合わせ、3万5千余の軍で、国境を固めた。

同時に、軍を動かそうにも、国境を固められ、動けなかったと反論。
攻めるべきは、ラーダと国境を接する、各騎士公国にあると論じた。

 先に述べた、3者会談が行われたのは、まさにこの時だったのである。

 リュ−ド一世としては、冬には蓄えが消え、盗賊と化し、旅人から
通行料を巻き上げねば、暮らしていけない山間部には、大きな魅力を
感じていない。
 加えて、騎士団連合を封じる為、外交手段としての、’神聖帝国’に、
恩を売っておきたい。
 この地方に、釘付けになっている、軍を一刻でも早く、騎士団領との
国境に向かわせたいのだ。

 ライノ皇帝としては、とにかく、失われた大陸への足掛かりが欲しい、
ここから東の半砂漠化した内陸部にはさして魅力を感じない。
 加えて、今は、治安を回復し、統治力を増す時間が欲しい。
 今、トゥーラを下す事は可能だが、そうなれば、トゥーラ国内のおいしい
地所は、騎士団連合に持っていかれるのが、目に見えている。
 トゥーラには、今しばらく、防波堤になってもらわねばならない。

 統領猫としては、とにかく、軍を引かせたい。 死んだ者たちへの償いと、
これまで通りの半自治が、手に入れば、それ以上は望まない。
 この地に国の統治が及ばなければ、今まで通り、通行料で、暮らして
いける。
 どんなに貧しくとも、ここは、生まれ育った故郷なのだ。
他国の為政者に渡す気はさらさら無い。

 ・・・、統領猫が会談に参加した理由が、もう1つあった。
トゥーラの国王の顔を、見てやろうと思ったのだ。
 妹が、仕えていた王の顔を、・・・妹を守れなかった
阿呆の顔を見てやろうと、思ったのだ。

著者注:会議の1週間ほど前、トゥーラ王宮で、暗殺未遂騒ぎがあった。
王族専用の浴室で、王を殺めようとしたらしい。犯人はすぐに捕まり、
(難を逃れた)リュ−ド一世自らが、斬り捨てたと伝えられている。
その後、間違って殺害された(影と思われる)人物の骸を抱き、
リュ−ド一世は号泣した、と、伝えられているが、これは話が美化されて
伝わったものだろう。・・・自らの影の為に、統治者が涙を流すとは
考えにくいからである。


次章に続く


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