直線上に配置

トップ物語

トゥーラ年代記

第7章の6 


深夜の厨房。
 シチュー鍋の中身を睨みながら、リュード1世は
果てしない、思考の旅に出ていた。
 このまま手を拱いていれば、皇帝領は海洋国家として
思うままに、富を集めていくだろう。それだけなら良い。
 トゥーラは、船では輸送不可能な、生鮮食料や、急を要する
手紙の輸送で、利益をあげていく事が出来る。
 しかし、潤沢な資金を持った国が、現在の状況を、享受し
続けるだろうか?
 否、皇帝は、先祖が受けた屈辱を、忘れてはいまい。
再び、トゥーラを併合したいと、願うだろう。

 かつては、何も益のない砂漠地帯のお陰で、皇帝の意欲を
殺ぐ事が出来た。
 しかし、現在では、そこにメッセンジャー制度の中継基地がある。
メッセンジャー制度は、その強力な情報伝達力で、トゥーラの血脈と
なり、力の根源となっている。それは強力な武器であると共に、
アキレス腱でもあるのだ。
 メッセンジャー事務所に、用意されている、トゥーラ国内の精密な
地図。
 これを奪われれば、トゥーラは丸裸に等しくなる。
地図は焼き捨てたとしても、メッセンジャーが口を割れば、
トゥーラ国内の地理は、筒抜けになるのだ。

 現在は、なりを潜めているノーラにしても、トゥーラ及び、騎士公国内の
地図は、咽から手が出るほど、欲しいだろう。
 皇帝領が、香辛料のセールスを始めれば、ノーラも、騎士公国も、
事態の重要性に、気が付くだろう。
 遠洋航海と、荒れる北海を航海する技術が、イコールだとは思わんが、
神聖帝国の始祖伝説(始祖は海外から渡河してきたとの伝説)が、
本当であれば、それも可能かもしれない。

 ノーラに圧力を掛けさせ、自分の元に、飛びこまざるをえない状況を
作ることなど、たやすくやってのけるだろう。・・・あの皇帝ならば。
 はっきり言って、皇帝領は目障りだ。潰せるものなら潰したい。
しかし、現在の国力で、一国を相手に正面戦争を仕掛けるのは、
無謀だ。ノーラや、騎士公国に、おいしい思いをさせるだけだろう。

 ・・・造船の秘密が欲しい。それに、イド5王家の詳しい内情も、だ。
しかし、棟梁猫の目を盗み、人を送るのは至難の業だろう。
直接、イド5王家に人をやるべきか・・・。

 ・・・と、なると、貴族どものケツひっぱたいて、造船に駆り立てるしか
手がないか。・・・どう言って騙くらかしてやろう?


次章に続く


プラモ&パズル まじっく トップへ

直線上に配置