直線上に配置

トップ物語

トゥーラ年代記

第7章の 7

 海上交易に置いては、帝国領に、一歩道を譲った格好の、
トゥーラであったが、地上の輸送・連絡網の構築に置いては、
他国の追随を許さず、自国内ばかりか、棟梁猫自治区および、
騎士公国の約半分にまで、その影響力を広げていた。

 もちろん、安寧に、事が運んだわけではない。
特に、騎士公国内に、組織を作成するに当たっては、
何度も何度も、公国側と衝突し、外務卿を始め、外務省の
主な役人達は、数年間に渡り、ほとんど休みを取れない状況で、
交渉に当たったようであった。

 中でも、外務卿と、騎士公国外相との対談で、8時間にも及び、
議論を戦わせた末、ついに、メッセンジャー事務所を再開させた
ミレル卿の功績は、トゥーラの、言葉による侵略と揶揄され、
広く語り継がれる事となった。

「だから! スパイ行為に繋がる、事務所の開設なぞ、
認められん!」
「一体、いかなる根拠証拠を元にして、おっしゃっておられるのか!
当国のメッセンジャー制度は、ひとえに、商業の発展保護の為の
補助組織であり、それ以外の何者でもない! 該当地点の
事務所は、あの動乱以前から、存在しており、停戦合意文書で、
その活動は保障されている!」
「保障しているのは、あくまで、個別の商業行為のみである。
国家レベルの商業活動は、認めておらん!!」
「合意文書の、どこに、そのような但し書きがなされているのか?
なんら、事実に基かぬ要求をされるのは、騎士公国に、野心ありとも
とれる。騎士公国に、条約遵守の意思が無いのであれば、
これはトゥーラ1国の問題では、すまされない。平和を尊び、大陸西方の
安寧の為に、各国間で交された相互不可侵の条約群を、
あなた方は、踏みにじるというのか?」
「我々に野心は無い! むしろ、危機を感じているのだ!
あなた方なら、国家内に、他国の施設を容認するのか?!
咽元に、剣先を突きつけられるも、同然ではないか!!」
「我々は、そのようには考えていない。あなた方が望むならば、
わが国の中に、あなた方の視察・滞在施設を、作る用意がある。
我々が望むのは、繁栄であり、破壊でも、破滅でもない!」

・・・後に、首都に設けられた、滞在施設を見て、騎士公国側は、
歯噛みして、悔しがったと言う。なぜなら、その施設は、
メッセンジャー事務所の、真正面に位置しており、出入りの情報が、
すべて筒抜けになってしまっていたからだ。


次章に続く


プラモ&パズル まじっく トップへ

直線上に配置