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トゥーラ年代記
第7章の 11
「外務省に出向、・・・ですか(−−)」
イレフは、間違いであって欲しいと念じながら、聞き返した。
しかし、現在の上司、商務卿から発せられた台詞は、
「そうだ、うれしいだろう?」
だった。
・・・確かに反りの合わん、この間抜けの元を離れられるのは
うれしい。・・・しかし、よりによって、外務省とは(−−)
かつての部下、スライの裏切りで、私の名は反体制派として
国王に知られているはずだ。
外務省のボス、ミレル卿は王弟ではないか!
これでは、クビ宣言にも等しい。・・・名の割れた者は、いらんと
いう事か(−−)
「無事に戻ってこれたら、幹部として、再雇用してやる。
航海関係の責任者だ。うれしいだろう?」
商務卿は、意地の悪い笑みを、まったく隠そうともしない。
・・・そんなだから、部下の信頼を得られないんだよ(−−)
心で毒づくしか出来ない、自分が情けない。
無駄とは知りつつも、帰ってきたときのポストを念押しして、
庁舎を後にした。
妻と両親に事情を話し、何かあれば、家督を弟に譲ると決め、
覚悟を決めて、
敵地外務省の門をくぐった。
「商務省より、出向して参りました、イレフです。」
ノックしながら、声を掛ける。
「入りたまえ。」
ドアの向こうから、落ち着いた声が聞こえた。
これが、王弟ミレル卿の声か。・・・直接聞くのは、初めてだな。
妙なところで感心しながら、ドアを開けた。
! ・・・驚いた。ミレル卿一人だけだと思っていた室内に、
先客が居たのだ。それも・・・
「スコット卿!・・・」
「ほう? わしを知っているのか? わしも名が売れたのう(^^)」
邪気の欠片もないような、笑顔と声色。・・・たぬきめ(−−)
私が口を開くより早く、外務卿の突っ込みが入った。
「あなたの名と顔を知らない役人が居たら、それこそお目に
かかりたいですね。そんなのが10人も居れば、この国は滅び
ますよ(−−)」
お見事! 顔色変えずに言ってのけるとは、・・・なかなか
突っ込み慣れてると見た。
感情が多少顔に出たのかもしれない。
こちらに振り返った外務卿の口元にも、笑みが浮かんでいた。
「内務卿の発言は、気にしないで下さいね? イレフさん。これから
しばらくの間、あなたの上司になる、ミレルです。よろしく(^^)」
・・・自然な笑顔だ。これが演義だとしたら、私や、商務卿が
太刀打ちできる相手ではないだろう。
私は・・・、目が見えてなかったのかもしれない。
「さて、気にするなといわれたから、独り言でもしゃべってみようかの。」
おもむろにスコット卿が口を開く。
「スライの報告では、イレなんとかなる人物は、リューさんという人を
良く思っていないようじゃ。・・・が、人の考えは変わるもの。環境や、
新たな知識で、見えなかった物が見えてくれば、な。わしらは、人数が
少ないし、手はごらんの通り2本しかない。この手の代わりに動き、
この目の代わりに見てきてくれる者は大歓迎じゃ。・・・いや、独り言
ひとりごと(^^)」
そういいながら、スコット卿は部屋を後にした。
・・・私を、・・・受け入れる?
次章に続く
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