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トゥーラ年代記

第7章の 12 イレフの航海日記


 いやな夢を見て、目が覚めた。 上半身を起こしたとたん、
胃に、むかつきを感じる。 ・・・船酔いだ(−−)
こんなに、船に弱いとは、思っても見なかった。
川で幾度か遊んだときは、平気だったのに、・・・ついてない。

 いや、ツキなど、とっくの昔に失っていたのだろう。
ミスを犯さず、人の足を引っ張ることが当たり前の、役所務めで、
対立組織に名前を知られるなぞ、愚の骨頂だ。
こんな事になる位なら、自分の足で調べに行けばよかった。
・・・いや、それも無理か、蛙シチューは喰いたくないしな(−−)

 船酔いのせいか、頭痛もし、考えもとりとめが無い。
胃は相変わらずむかつくが、気分転換に、甲板に出てみる事にした。
空は、晴れ渡り、海も真っ青だ。・・・そのぎらつく陽気さが、
かえって、気持ちを萎えさせる。

 水夫達は、平気で作業してるし、他の文官たちも、談笑したり
本を読んだりしている。
うぅ、みっともない。船酔いは、私だけか。
・・・ん? 船べりで、固まっている人物がいる。
一心に海を見ているようだが、どこか不自然だ。

「こんにちは、何か見えますか?」
「・・・いぇ、何も・・・」
 極端に口数が少ない。機嫌が悪いのか?と、思ったが
かまわず話し掛けた。
「恥ずかしながら、私は船酔いになったようです。話してると
幾分楽になるのですが・・・」
 その人物は、こちらを振り向かずに、言った。
「私もですよ。近くを見ていると、酔ってしまいそうなので、
ひたすら遠くを眺めてます。」

 ビンゴ! 犠牲者を見つけた事で、私は精神的に楽になった。
・・・もちろん、それで船酔いが消えるわけではないが(−−)
文官にしては、立派な体格のその男は、シャークと名乗った。
トゥーラで食い詰めたので、新大陸に、夢を見に行くのだという。

 嘘だと言う事はすぐに判った。反体制派の貴族どもが私兵を
欲しているのだ。この男が、見かけ通りの筋力を持っているのなら、
仕事の口は幾らでもあるだろう。
貴族に恨みでも買ったか、殺しでもやったか・・・、 そうでなければ、
王弟派の(私への)監視役かもしれない。

 何せ、公式には、私は商務省からのお目付け役だ。外務省側から
監視がつくのは当然だろう。
しかし、王弟ミレル卿が、評判通りの人物なら、もっと目立たない
監視をチョイスするはずだ。
・・・いったい、このシャークと言う人物は何者だろう?

旅の間の暇つぶしを見つけ、私は少しだけ、気分がましになっていた。


次章に続く


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