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トゥーラ年代記

第7章の 13 

国王居室

「反対ですな。」
 軍務卿が、静かに言った。
「現在の状況下では、ベテランの船乗りが不足します。すべての船を、
賊から守ることは出来ません。」
「その通り、だからこそ意味がある。」
 顔色1つ変えず、リュード国王が答える。
「貴族の船を、見捨てると?」
「そうは言わん。・・・だが、軍部に要請を怠れば、それは商務省の
手落ちだし、軍務卿の忠告を無視し、強引に許可を与えたのなら、
その責は商務省に負わせるべきだろう。・・・トップの更迭は必死だろうな。」
 ・・・成る程。ちょろちょろとうっとうしい商務卿と、貴族どもを分断、か。
さすが、2枚舌大魔王、こういう細工はお手の物だな(−−)

「ですが、航路を知られる危険性が、増大します。独占は不可能になるかと・・・」
「問題ない。商務省に引き継ぐ際に、メッセンジャー制度の適用を義務付ける。
商務省が管理するのはあくまで商人どもだ。トゥーラの利益までは、管理させんよ。」
「・・・成る程。航路を許可無く航行する者は、トゥーラの庇護は受けられないのですな?」
「そういう事だ。万一武装した不審船が、同一航路にいれば・・・」
「トゥーラ国籍の船は、自衛上、戦闘もやむなし、・・・ですな。」

一方、内務卿のオフィスでは・・・

「失礼いたします!」
 必要以上に大きな声で、しゃちほこばってる一人の騎士がいた。
「ご苦労。・・・も少し、小さな声にならんか?」
 二日酔いでもしてるのか、頭を抑えつつ内務卿が答える。
その間も、目は机上の書類から、離れない。
「は、失礼いたしました!!」
 さらに大きくなった声に、やっと内務卿が顔を上げる。
「・・・ライちゃんよう、そんな大声出さんでも、ちゃんと聞こえるからよ(−−)」
「え? ・・・はぁ?!」
 ライちゃんと呼ばれた騎士はすっかり面食らって固まった。
・・・そりゃそうだろう。トゥーラ1の切れ者と呼ばれる内務卿の口から、
’ライちゃん’呼ばわりである。
 そして、・・・何か思い出しでもしたのか、ライちゃん(と呼ばれた騎士)は、
苦虫を噛み潰したような顔になった。

 その様子を意地の悪い顔で眺めつつ、内務卿は1つの命令を伝えた。
「騎士ラインハルト、ただいまから内務卿直属を命ずる。速やかに任務に付くように。」
 茫然自失の表情は、一瞬で過ぎ去る。散々リューさんにこけにされても、
基本は、鍛えられた軍人。命令を聞けば、背筋が伸びる。
「任務内容は?」
 幾分小声で返す。
音量が下がったことに満足したのか、内務卿が笑顔を見せた。
「ライン・サモに行け。棟梁猫と交渉し、皇帝領に入る手はずを整えろ。その後、
外洋航海について可能な限り調べて来い。」
「は!!」
 ・・・と、答えたものの、任務の重大さに、何処から手をつけるべきか、
途方にくれるライちゃんであった。


次章に続く


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