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トゥーラ年代記

第7章の 16 イレフの航海日記2

 真っ青な空、真っ青な海、マストに止まる、白いかもめ・・・。
視線を下ろすと、舷側をふらつく男が、約2名。顔が青白い。
・・・律儀に、空と雲の色を混ぜ合わせることは無いと思うが、
当の本人達は、好きで顔色を変えてるわけでは無いらしい。
港の喧騒も耳に入らないほど、ぐったりとしていた。

「あ・・・嵐が、起きるなんて聞いてないぞTT 」
「外洋ですからな、なんでもアリかも知れません。
まだ、魔物が出なかっただけましかと。・・・」
「魔物なら、まだ戦えるTT 波では戦いようが無い。」
 取り留めの無い会話を交わしつつ、船を降りる二人。
イレフと、シャークである。
渡し板を歩く足元がふらつき、危なっかしい。

 会話からすると、どうやら嵐に遭遇したようだ。
成る程、メインマストに張られた帆が、所々破れている。
決して二人が、大げさな訳ではないらしい。
 他の文官たちも、心持ち元気が無さそうだ。
しかし、運んできた荷物のチェックを、きちんとこなしている。
船員達も、積み下ろしや修繕の手配で、忙しそうだ。

 二人は、そんな周囲の状況に、まったく注意を払うことなく、事務所に入り、
茶を飲み始めた。
・・・いや、注意を払う気力すらなかったのだろう。
 イレフはシャツがズボンからはみ出してるし、シャークに至っては、ズボンの
1部が全開状態になっている。
 普段しゃれ者の二人がこの惨状なので、気の毒がって、誰も声を掛けな
かったようだ。
 そのお陰でちょっとした騒動が巻き起こり、二人の名前は、ガーラの港中に
知れ渡るのだが(笑)、・・・まぁ、その話は別の機会に譲ろう。


 何日か行動を共にし、酒を飲み交わした後、シャークと名乗る人物は、
旅に出ると言い置き、内陸部に向かった。
 私の監視役だと思っていたので、少々拍子抜けを感じる。
彼は、本当に食い詰めて便乗しただけだったのだろうか?
そうであるとすれば、監視役は、他にいることになる。
 別に、困るようなことは無いが、相手が判らないのは、
気持ちの良いものではない。

 今回は、5王国への表敬訪問も控えているので、2週間程度で、
再び出航する事になっている。
その間に、ここガーラでの取り引き内容を確認し、その手順を
覚えなければならない。
 取引相手の商人や、担当役人の顔(と性格)を覚えるだけでも一苦労だ。
シャークの事は、いつしか記憶の底に、埋もれていった。


次章に続く


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