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トゥーラ年代記

第7章の 22 

「・・・やはり、居られません。」
「むぅー(−−)」
「今から、追いかけても・・・・」
「ムリだろうね! まったく、サボる事にかけては天才的なんだから!」
・・・などという、和やかな(?)会話がなされたかは、さておき、
リューさんの突然の出奔&会見で、騎士公国とトゥーラは、
強力なパイプを持つ事になった。

 東の国を攻めるに当って、ルーちゃんが最も懸念したのは、
補給の確保と、後背の憂いだった。
リューさんに領土的野心は無いとは言え、下手に怒らせて、
商業活動を制限されると、東方への侵攻計画に大きな影を落としかねない。
皇帝領の航海技術と商材に興味はあったが、直後の憂いをけす為に、
あえて、トゥーラとの商取引を優先させていた。

 そこに持ってきて、リューさんからの大胆な提案である。
これに乗らない手は無い。
一筋縄でいかない相手なのは、十二分に承知している。
本人すら欺いて、トゥーラに追い入れた斥候を、あっさりと皇帝領に
弾き飛ばす相手だ。
 いくつか厳しい条件が提示されたが、それ以上に、連絡網の確率と、
商業的結びつきは魅力だった。
軍事力のみでは、国を維持しまかなう事が出来ない。
ここ数年でイヤというほど思い知らされた事実だ。

 その点、あの危機的状況から、国を再興・繁栄させた、リュード一世の手腕は
賞賛に値する。
そのやり口を学ばせてもらう機会が訪れたのだ。これをそでにする手はない。
ラーダ領の詳細図提供の意味は、軍治干渉の放棄を宣言する代物、いわば
物質である。
国内にメッセンジャー制度を敷くのは、国内の事情と情報をトゥーラに握られるに
等しい。その保証の意味合いがあるのだ。
これまで、管理下に無いメッセンジャー事務所のお陰で、商業の流れが今ひとつ、
つかみきれてなかった。

 しかし、メッセンジャー制度が自分の管轄下にくるのだ。
国内経済を把握する事が易く、管轄不能な情報経路に悩まされる事も少なくなる。
元々、砦間での早馬制度はあるので、軍事情報が必要以上にトゥーラに漏れる
ことは無い。
トゥーラを攻めるメリットも、ほとんどなくなっているので、この提案はまさに理想的だった。
ただし、良い事ずくめではない。リュードからの要請も、それに見合う大きなものだった。

 1つは、新兵器弩の譲渡。これは、その用兵を含め、軍事的優位をなくしてしまう。
トゥーラを攻める気は無くなりつつあるとは言え、軍事力で優位に立てない事は、
戦端が開かれた場合、大きな犠牲を伴う事を意味している。
トゥーラ側にとって、不可侵条約に等しい要求だ。国王自らやって来た点を踏まえても、
これが一番の目的だったのだろう。

 いま1つは、成立したメッセンジャーを使って、南方貿易の護衛任務に従事する事。
国内に多くの政敵を抱えるリュードは、南方航路に不用意に貴族商船を参入させえない
事情がある。
航路を私用し、腹を肥やさんとする、貴族どもを取り締まるのに、人手が居るのだろう。
この話は条件を擦りあわせ、南方航路の商船の半分を、騎士公国内の港に入れる、
という事で落ち着いた。
 従来は3割程度であったし、荷のすべてが降ろされていた訳ではなかったので、
国益は大いに上がることとなる。
簡単には行かないだろうが、航路の秘密や南方の地図を手に入れたいものだ。

 最後に思い出したように、リュードが付け加えた。
「そうそう、ゲオちゃんを預かってるよ。・・・あれ、もらって良い?」
「駄目、と言いたいところですが・・・、ま、仕方ありますまい。本人の決断に委ねましょう。」
「本人がOKしたら、家族引き取って良い?」
「土地まではさし上げませんぞ?」
「ちえー、・・・ま、いいや。そろそろ帰るね。」
「お気をつけて、陛下。野盗に襲われませぬように。」
「ぞっとする事、言わないでよ〜^^; 」

 リュードの帰国に合わせ、軟禁していた斥候数名を解放した。
途中、リュードの護衛を兼ねるだろう。身分の不確かな者に付いては、
監視を付けている。リュードの手のものでなければ、事故死するだろう。
リュードが約束を履行すれば、後方への憂いは大きく減る事になる。
国内統治も目処が立ってきたので、東方侵攻に集中できるだろう。


次章に続く


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