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トゥーラ年代記

第7章の 23 

皇帝領にて

「騎士公国への働きかけ、不首尾に終わりました。」
「リュードのほうが上手だったな。ルードヴィッヒも、暗君ではなかったか。
・・・ちょっと侮っていたかな?」
「(ルードヴィッヒの)国内掌握は、見事でした。統治力は、リュードを上回って
いるかもしれません。」
「こうなると、東海方面は諦めるしかないか。・・・北方の、詳細報告が欲しいな。」
「・・・御意。すぐに人を遣わしましょう。」

 退出し、廊下を歩きながら、将軍クゥースは、主君の言を吟味していた。
皇帝陛下は、北方の詳細報告と仰られた。
北部領土ではなく、北方、詳細図ではなく詳細報告。
・・・その意味するものは、ノーラとの国交樹立。それも、トゥーラの間者に
気付かれない、ルートの確立だ。
国土北部の地図はもちろん、ノーラ内の地形図及び、北海の気象条件。
従来不可能とされたルートだ。・・・陸も、海も。

 逆に言えば、これを確立し得た場合、皇帝領は莫大な利益を得られる。
ノーラにとって必要不可欠な、物資の補給ルート。
求めてやまなかった、凍らない港。それを提供できるのだ。
無論、魅力的過ぎる商品は、丸ごと持っていかれる危険を孕んでいる。
しかし、海上ルートであれば、1部の船乗りしか知り得ないだろうし、
陸上のルートであれば、守りきる自信がある。

 先の心配より、今は、このルートを確立する事だ。
国内平定の為、使える部下は各所に出払っており、人材は限られている。
・・・機密保持が困難にはなるが、ここは一つ、あの男の力を借りるしかないか。
山岳民族を束ね、あれだけの動きをして見せた男だ(*)。
山中の抜け道も熟知しているだろう。
問題は、情報を漏らさぬように懐柔する策だが、・・・さてどうしたものか。


トゥーラ西部砂漠

「・・・なー、ほんとにこの方角か?」
「ああ! あってる、・・・ハズだ。」
「・・・おいっ(−−)」
 影一つない砂漠である。日差しをさえぎるものも無ければ、目印になりそうな
山すらない。
シャークが居れば、地図があったのだろうが、あいにくとここに居るのは、
’シャークと名乗った人物’で、ある。
追われる身の悲しさで、正規ルートを通れない。
お約束のように自分達の位置を見失い、太陽を頼りに旅を続けているのだ。

 ひょっとしたら、あの砂丘の向こうに街があるかもしれない。
何度かそう思い、砂丘にあがった。
結果としてその行為が、街道から反れるのに役立ち、見事に迷子になったのだった。
目的である、’十字流をへこませる’行為には成功したものの、それですべて
解決するはずも無く、結局正規ルートを通れずに、(相手が役人で無く刺客なだけに
始末が悪い)こののような結果となった。

 このまま、町を見つけられなければ、日干し人間の出来上がりだ。
水筒の中身は昨日から空になっている。持って後、1日半だろう。
・・・と、その時二人は、信じられないものを見た。
美味そうに水を飲んでる男だ。しかも、派手なストライプ模様を着ている。
メッセンジャーだ。こいつについて行けば、町に着く!
喜んだ2人は、大声を上げながら、メッセンジャーに駆け寄った。

 一方、メッセンジャーの兄ちゃんは、突然の事態にびびった。
擦り切れ、砂にまみれたいでたちの男が二人、大声をあげながら近づいてくる。
しかも、武装しているようだ。・・・野盗に違いない! ><
兄ちゃんは、飲みかけの水筒を放り出し、一目散に逃げだした。
 こうして・・・、砂漠で壮絶なおっかけっこが、始まった。
ゴールはオアシス。賞品は命。 ・・・労力の割には、報われんレースだな^^;


*:ノインハウ将軍の軍を2度までも破り、講和に持ち込んだ棟梁猫、
ライドール・カウスの事。
ゲリラ戦を得意とするが、集団での篭城戦でも見事な指揮を取った。


次章に続く


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