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トゥーラ年代記

第7章の 30 

 参加者が多い為、2回戦が始まるのは、午後遅くからになるようだ。
そう知らされ、小腹の減ったシャークは、会場内の屋台を、見て回る
事にした。
 いろいろな物が炙られ、香ばしい匂いを出している。
海からは離れている村だが、塩漬けにでもされているのか、魚も
焼かれていた。
 結構大きな魚のようで、3枚に下ろした片身を、串に刺して焼いている。
表面に滲み出し、滴り落ちる脂が旨そうだ。
これに決め、薄い円盤状のパンに乗せて貰う。
 その他、とうもろこしと言う粒の大きい穀物も炙られていたが、1度に
2つは持てない。
後で、(腹に)余裕があれば買うことにして、試合観戦に戻った。

 一回戦の相手から、レベルの高い大会かと思ったのだが、出場選手の
力量はピンキリで、中には、笑いを取るためだけに出てるとしか、思えない
者もいた。
 散々相手から逃げ回り、とうとう逃げ場がなくなると自分から膝を付け、
大袈裟に、命乞いをして見せるのだ。場内は、大爆笑である。
降参した相手を攻撃すれば、重大なルール違反と見なされ出場資格を失う。
その為、対戦相手はぶつけ所のない怒りを抱え、顔を真っ赤にして立ち去って
いった。
・・・気の毒という他はない。

 中には、何度も顔を合わしているのか、名前が呼ばれただけで、場内に
どよめきが走る、組み合わせもある。
・・・会場が、沸くはずだ。どちらも、がちんこファイターで、引く事をしない。
(勝者には)この後も、戦いがあると言うのに、血だらけになりながら殴り合って
いる。
 3分も、殴りあっただろうか。片方の選手が、大きく回転し、バックブローを
打ち込みに行った。
通常ならあっさりかわされる大技だが、相手選手は、朦朧とした意識でカウンターを
撃ちに行った為、その顎にクリーンヒットした。
 崩れた相手を、手を貸して起こしてやり、お互いにハグしている。
美しい光景だが・・・、2回戦で、こいつに当たる選手はラッキーだな。

 その他、砂を相手に投げつけて、場内から大ブーイングを食らうやつ。
剣の、試合だったなら・・・と、ぶつぶつ言い訳をするやつ。
飛び蹴りをかわされて、あっさり自爆するやつ。と、見ている分には飽きが来ず、
楽しいお祭りだった。
 お腹が満たされた事もあって、シャークは、いつしか船を漕いでいた。

「・・・い、おい! 」
肩を揺すられて、シャークは目を覚ます。
「んー? ・・・」
しばらく寝ていたようだ。日の傾きが増し、風景に朱が滲んでいる。
シャークが、ぼんやりと周りを見ていると、一斉に笑いが起こった。
肩を揺すった男が、呆れ顔で言う。
「あんたの出番だよ。・・・たいした、余裕だなぁ。」
「・・・ふむ。」

 立ち上がり、大きく伸びをして、広場の中央に歩き出す。
シャークが伸びをしたり、肩や首を回すたび、観客席から笑いが起こる。
一方、対戦相手は、呆れ顔と、怒りの入り混じった、複雑な表情で、
シャークの到着を、辛抱強く待っていた。

 戦いへの期待で、試合会場を、徐々に静寂が支配し始める。
しかし、中央まで歩くその間、シャークの頭を支配していた考えは、
’あのとうもろこし、まだ売っているかなぁ。’・・・だった。


次章に続く


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