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トゥーラ年代記

第7章の 9


朝から、機嫌が悪かった。
原因不明の胃痛に悩まされ、昨夜はろくに寝ることが出来なかったのだ。
起きてからも、食欲が無く、もう何杯目かも判らない水を、飲み干した。
胃が水で満たされている間は、痛みを忘れていられる。
今日も、謁見が有る。会いに来る人物達に、弱みは見せられない。
時間までに痛みが和らげばよいのだが・・・。

正午前、ようやく痛みが和らいできた。相変わらず、食欲は無い。
ここまで、さほど重要でない用件を、2つほどキャンセルした。
給仕に知られてはまずいので、飲み物の変更は出来ない。
夕方、謁見終了まで持ってくれればいいが・・・。

顔に疲れの色が滲んでいたのか、報告に来た軍務卿が、
怪訝そうに眉を寄せる。
めったに感情を表さないこの男が、珍しい事だ。
心配をしてくれる人物がいるという事は、嬉しい事だ。
しばらくはまだ、倒れるわけには行かない。
大丈夫だ、と、目に力を込めて、見つめ返した。

ようやく謁見が終了し、夕食の時間になったが、相変わらず食欲が無い。
さっさと寝てしまいたかったが、今日の夕食は、大使達との懇談も兼ねており、
抜け出すわけに行かなかった。
外務卿に替え玉を頼みたい所だが、彼は海図の修正と、新航路の検討で、
部下達と協議中だ。
あと2時間は、この拷問に耐えねばなるまい。

ようやく寝られると思い、自室のドアを開けると、・・・内務卿が待っていた。
私に向けて、ワインの入ったゴブレットを持ち上げて見せる。
・・・くそぅ、俺は胃が痛くて飲んでないのに(ーー)
また、聞きたくも無いトラブルの報告だろう。
心なしか、胃痛が強さを増した気がする。
・・・最近噂の、若いツバメの事でも聞いてやろうか?


次章に続く


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