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トゥーラ年代記

陛下の告白 1

作者:仁奈様

ここに一冊の手記がある。
著者はおそらくリュード一世であろう。
内容は・・・読んでみればわかるだろうが、
別の資料にみえる陛下の姿とは少々食い違っているようだ。
この手記の内容が真実であるか、
リュード一世のただの創造なのか謎ではあるが、
ただ、ある章に見えるリュード一世に似つかわしくない話があるので
それを紹介しておこう。


〜赤髪への思い〜

私は生涯一人の女性だけを愛した・・・。
そして、今でも・・・。

その女性に興味を持ち始めたのは、そう・・・あの時からであった。

『この獣を見よ!ミレル!これは、弱いから殺されるのだ!
爪も持たず、柔らかな肌をしているから殺されるのだ!
己が庇護されていると、思っているから、
・・・思っているから殺されるのだ!!』
私は自分で飛翔河馬を屠った。
そこまでして私は力が欲しかった。
強い力が・・・。
だから、飛翔河馬をかわいがっているミユを見ていると、
不愉快で仕方がなかった。
そこで、ある時ミユに聞いたのだ。
「おまえは何故、そんなにかわいがるのか?
何の力もない弱い飛翔河馬を!!」

「リューさん、あんた、安らぎ、というものは欲しくないの?」
「安らぎ・・・?」
「そう、このコは柔らかな肌をしている。
爪や牙を持たない。
誰かに守られなきゃ生きていけない。
でも、何故皆はこのコを庇護すると思う?」
「・・・・・・」
私は答えられなかった。
ミユは続ける。
「それはこのコは皆の安らぎになることができる。
爪や牙がない。
だから、他の獣を傷つけることはしない。
柔らかな肌をしている。
だから、親しみが持てる。温もりが感じられない・・・」
「じゃあ、コイツが傷ついてしまったら、
力がない為に傷ついてしまったならどうするのだ?」
「だから、私がいるんじゃない!!
医者がいるんじゃない。傷ついた者を癒すために。
・・・リューさん。自分の周りだってそうでしょ。
何故ミレルやスコット卿、シャークに私がいるの?
それと同じことよ。」
「・・・・・・」
最後にミユはこう付け加えた。
「強い力なんていらない。
どうせなら、安らぎに似た力を・・・。」

私はわからなかった。
強い力というものが本当に要らないのかどうか。
でも、次のことだけは分かっていた。
ミユの言葉を思い出す。
「あんた、安らぎ、というものは欲しくないの?」
安らぎ・・・。
心配ごとがなく、穏やかな気持ち。
安心感を与えてくれるもの。
心の平安。
城での重荷をすべて取り除いてくれるもの。
不愉快なものを忘れさせてくれるもの。
一時的なものでもよかった。
その答えは一つしかなかった。

   次章に続くかも・・・


それからというものの私は事あるごとにミユの所へいった。
それがたとえ、些細なことであっても・・・。
その度に自分の心の中にある得体の知れない何かが
湧き上がってくることが手にとるようにわかった。
時には、それが外に出たがっているということもあった。
そして・・・

「リューさん、あんた王様でしょ。
こんな所で油売ってて良いの?
それとも、何、まさか・・・」
「ミユ!!」
「な、何!?」
いつになく真剣な顔をしていたのだろう。
ミユは、ビクッとし身構えている。
私としては、冗談であっても女性から、
当の本人から、先にいわれたくなかった。
(私は、おまえと共に・・・)
本当に言ってしまって良いのだろうか。
後悔はしないだろうか。
私の頭の中であらゆる考えが渦を巻き、
続きを言わせることを邪魔する。
静けさが舞い降りた。
ありとあらゆるものが静止してしまったように感じた。
その場の時の流れが全て止まってしまったような・・・
そんな感覚に陥った。
私の顔は、今きっと冷や汗が流れ、
苦悩しているような表情に違いない。
そうだ。ミユは・・・ミユは今どんな顔をしているだろう。
私は顔を上げ、ジッとミユを見る。
そのときのミユの表情は忘れられないものであった。

「リューさん・・・」
ミユの声がして、ハッと我に返る。
「あなたが今、何を言いたいのか良く分かる・・・。
でも・・・。
でも・・・外には出さないで。
外に出てしまうと・・・ボクは・・・
リューさんを後悔さしてしまいそうで、
悲しませることになりそうで・・・、
それが怖い。」
ミユは小さく震え、目に涙を溜めていた。
私は自然と身体が動いた。
この小さな、放っておくと消えてしまいそうな、
小さな身体を包み込み、
そして、そっと口づけをした。
温かかった。
この温もりが、ミユのいう安らぎなのであろう。
悪くない。
願わくは、この温もりが永遠に冷めぬよう・・・。

   次章に続く・・・かも


次の朝、目が覚めるとミユが隣でかわいらしい寝息をたてていた。

いつしか外に出たがっているものは消え、
代わりに温もりがあった。
ふとミユの言葉を思い出す。
「強い力なんて要らない。
どうせなら、安らぎに似た力を・・・。」
ミユを守りたい。
ミユを失いたくない。
そんな思いで、いっぱいだった。

   次章に続く・・・かも


しかし・・・。
これ以上は何も語ることはあるまい。
事実だけは何も変わらないのだ。
かつて、私はミユという女性を愛した。
そして・・・・・・だということも。
ミユはもういない。

   最終章に続く・・・かも


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