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ハッシ 治世30年

5 前編

ある日、王様はこう思いました。
’ドラゴンのたまごが食べたい’
王様は、たまご料理が大好きだったのです。
でも侍従は、’お体に触りますから’と、1日2個までしか
食べさせてくれません。・・・いぢわるですね。

王様は、どうしたら大好きなたまごを、お腹一杯
食べられるか、毎日そのことだけを、考えていたのです。
そして、思いつきました。たまごが大きければいいのです。
本で読んだドラゴンのたまごなら、きっと大きいに違いありません。
王様はこの考えがすっかり気に入り、さっそく大臣に言いました。
’ドラゴンのたまごを持ってくるように’

困ったのは大臣です。ドラゴンのたまごなんて、そうそう売ってる
ものではありません。
それどころか、ドラゴンが本当にいるのかどうかさえ、わかりません。
大臣は、毎日ドラゴンの噂を求めて、酒場に通いました。
しかし、ドラゴンを見たという話は、ついに聞く事ができなかったのです。
困り果てた大臣は、ある日、とうとうお城から逃げ出しました。
’ドラゴンを探してきます’という、苦しい書き置きを残して。

お城を飛び出した大臣は、追っ手を恐れ、船に飛び乗りさらに
遠くへ逃げました。
船から下りても不安が消えず、知らない大陸の知らない町を
いくつも通り、とうとう人に会わないよう、森の中に逃げていきました。
森で暮らし始めた元大臣、夜の暗さや、さびしさにもようやく慣れてきた頃、
草原で、とてもとても大きな鳥を、見かけました。
’食いでがある!’
大臣の頭にまっさきに浮かんだのは、その事でした。
もうすっかり野生生活が身に付いたようです。

壮絶な追いかけっこの末、日が傾きかけた頃にやっと捕まえたその鳥は、
涙を流して、元大臣に命乞いをしました。
’私を助けてくれたなら、あなたの毎日が潤いに満ちるよう、歌を歌って差し上げます’
’私が欲しいのは、潤いではなく、お肉だ’
’私を助けてくれるなら、あなたの毎日が刺激的になるよう、お話をいたします’
’私が欲しいのは刺激じゃない、平穏だ、・・・そして、食料だ’
そんな不毛なやり取りが数度交わされた後、鳥はこういいました。
’どうか、翼のない鳥を、哀れと思い、命をお助けくださいませ’
大臣は忘れていた好奇心を、ちょっとだけ刺激されたようです。
’どうしてお前には、翼が無いのだ?’

・・・大臣は、鳥の策略にはまりました。宮廷を離れて時間を過ごした
大臣は、言葉の駆け引きのコツを、忘れていたのです。
鳥の身の上話を聞くうち、すっかり鳥に同情した大臣は、鳥を食べる
ことが出来ず、すきっ腹を抱えたまま、とぼとぼとねぐらの森に帰りました。


後編に続く


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