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我を呼ぶ声

第0章 始まり

 M・T・G・・・それは、魔獣や精霊、禁呪などを封じた札を用い、いずれかが倒れるまで戦う、魔術師の決闘用呪符の事である。

 そして、それは大人気のカードゲームの事なのだ。・・・いや、だった。
 これから語る物語は、‘私’が、‘呼び声’に応え、召還された地で経験した国の命運を左右する決闘(デュエル)の話である。

第1章 始まりの60枚

 まぶしい光が消えると、私は、大きな建物の中に居た。
 天井の高いドーム状の建物だ。壁の1部が崩れ、外の様子が見て取れる。
 外からは、剣戟と怒号、悲鳴が入り混じって、聞こえてくる。
きょろきょろと、回りを見回していた私の前に、白い貫頭衣を着た、老人が立った。
神官「呪符の使い方は心得ておるな?」
 60は越したであろう、老人が声をかけてくる。
 その、皺の刻まれた手から渡されたのは、MTGのカードだった。
私「? 呪符って・・・MTGの事?」
神官「そうだ、君の世界ではそう呼ばれている。偉大なる大魔道士トキリンが、伝えたはずだ」
私「・・・確か作ったのは、ガーフィールド博士だったような(^^;」
神官「説明している時間は無い。ここに未契約の60枚の呪符がある。これで念じなさい。・・・そして祈るのです。
すべての‘地’には‘マ・ナ’がある。すべての生き物には‘真なる名’がある。それらの者たちと‘契約’を交わしなさい。そして、隠された‘禁呪’を手に入れなさい。‘契約’は‘呪符’に刻まれる。それは・・・」
 神官の説明は途中で途切れた。・・・その胸から飛び出した、赤く濡れた剣先が、神官の言葉を奪ったのだ。命と共に・・・。

男「小僧! その呪符をよこせ! そしたら楽に殺してやるぞ? この神官のようになあ!!」
 そう言うと、男は大声で笑った。
・・・、どうやらこの軍団の指揮官らしい。右手に老人を刺したままの剣、もう一方の手に、呪符を持っている。左肩と胸に、部分アーマーを付けている。・・・、戦闘魔道士、か。
私「・・・よこせと言われて、はいそ-ですかって、渡す馬鹿がどこの世界にいるんだよ?! 1度脳味噌の中、洗ったらどうだ? おっさん!!」
男「・・・上等だ、嬲り殺してくれる!!」
 そう言うと、男は左手を高く上げ、呪文の詠唱に入った。
男『山よ、雄雄しくそびえる気高き峰峯よ、古の盟約により、我に炎の‘マ・ナ’を与えよ!!』
 私は身構え、手元の呪符を1枚手にした。・・・白い、真っ白だ。どうすればいいんだ?!
神官「・・・後ろに、下がりなさ・・・。サークルの中ならまほ・・・・貴方の‘マ・ナ・・・・MTG・・・」
 老人が最後の気力を振り絞り、言葉をくれる。
後ろを見てみると、そこだけ1段高くなり、なにやら、中央に魔方陣のような物がある。
 きっとこれだな?、 私はそのサークルの中央に移動し、呪符を見つめて念じ始めた。男は黙ってこっちを見ている。
 ・・・余裕をかましやがって!吼え面かかしちゃる!!
これが、あのMTGと同じなら、まず必要なのは‘マ・ナ’だ。その為には、土地と契約せねば・・・、じっと見つめていた呪符にあるイメージがわいてきた。それを言葉にして詠唱する。
私「・・・『平原よ、実り多き約束の地よ、我が‘真なる名’を持ちてそなたと契約を結ばん。我に白き光の‘マ・ナ’を与えよ!!』」
 呪符に、麦穂が揺れている風景が浮びだしてきた。契約に成功したようだ。私の中に、確かな‘力’を感じる。
男「・・・ほう?やるじゃないか小僧、ではオレの番だ!」
 男の手には呪符が握れれていない。呪符は男の周りに浮いている。その数6枚・・・いや、今、7枚になった。
男『荒らされ、見捨てられし高地よ、その怨嗟の声を‘マ・ナ’となせ!』
 男の背後に、山と、打ち捨てられた町が浮かび上がる。
 まるでホログラムのようだ。契約した地形が映っているらしい。
 ・・・終わりだ、という風に、男が軽く手をあげる。
 やれるならやって見ろ、と、言わんばかりだ。どうやら、私の力を見定めて、その上で殺すつもりらしい。
 嬲り殺すっと言った言葉を、実行するつもりのようだ。
 気を込めて呪符を見ると、その何枚かが、ふわりと浮び、私の周りを囲んだ。
 そのそれぞれに風景や、動物、人間の姿までが、浮んで見えた。
 1枚の呪符に念をこめ、その名を意識に同調させる。
私『山よ、雄雄しくそびえる気高き霊峰よ、我が‘真なる名’を持ちてそなたと契約を結ばん。内に秘めたる熱き‘マ・ナ’を、我が元に!』
 あんたの番だ、と言うつもりで指をさしてやった。男の眉間に縦皺がよる。
男「小僧・・・、『けぶる獣よ!溶岩の申し子よ!我が呼び声に応えん!!』」
 男は、もう1つ、山との契約を済まし、獣の‘真なる名’を唱え、その者を召還した。
 全身から牙を生やしたような、真っ赤な獣が現れる。その体から放射される熱で、建物内の温度が一気に上がったようだ。
 一方私は、平地と契約をするのがやっとだった。召還すべき者たちの‘真なる名’が、心に浮んでこないのだ!
男「どうした小僧?もう終わりか?!」
 男はせせら笑い、勝ち誇ったように召還を始めた。
男『狂える獣よ!猛き犬よ!その牙を我が力となせ!』
 男の前によだれをたらした山犬が現れえる。さらに!
男『我が望みは速き刃!その身に纏え、俊敏なる力!!』
 山犬に魔法の力が付与される。・・・禁呪か!!
 ニヤニヤ笑いながら男が手をあげる。
 もう1つ、山と契約を済ませた私の中に、背に光る翼をもった若者の力強いイメージがわいてきた。
私『秘めたる教えを守りし者よ、戦士にて、聖職者たる者よ!我‘真なる名’を持ちてそなたと盟約を結ばん!!』
 まぶしい光が目の前ではじけた!光が引くと、そこには秘教を奉じる若者がいた。
 左手に盾、右手にハルバードを持ち、こちらを振り返ってにやりと笑う。頼もしい味方だ。
 若者と私はそろって顎をしゃくり、お前の番だ、と、男を促した。


次章に続く





















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