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我を呼ぶ声


第1章の4

 襲いくる、赤き獣たち! 若者と猟犬が牙の獣を止め、炎の剣のドワーフは、マングースが迎え撃つ!
 禁呪の山犬は、防衛陣を掻い潜り、再び私の体に牙を穿つ。
 ! その時、マングースに向けた励ましの声が、私に帰ってきた! はじき返された?!
 マングースは、ドワーフの喉笛目掛けて飛び込む! 駄目だ! そのままではキミは?!
 ドワーフの喉元を食い破るマングース、その体を炎の剣が深々と貫く!
 一方、私の足を食いちぎろうとした山犬は、牙が体に届かず、その願いを果たせなかった。
 マングースに向けた禁呪が、わが身を守ったのだ。
 ・・・思い出した。彼は、マングースは誇り高き一族の出身だ。
 他者からの干渉を、一切、その身に受けないのだった。

 ・・・足元に、マングースの写った呪符が落ちる。私のミスだ。
 何とか喪失感に耐える。縁があれば、また会える! 私が生きていれば!
 牙の獣は、ハルバードと、猟犬の牙を受け、その場に倒れた。
 そして、蜃気楼のように揺らめくと、その存在は消え去った。

 私は、男を睨みつける。男の顔には動揺が見て取れた。
 自分の軍団が1体を残すのみとなり、一方、私の軍団が、1体を失っただけなのが、ショックなようだった。
 彼の考えでは、我が軍も1体を残すのみ、と、なるはずだったのだろう。
 ・・・甘い! 頭で描いた通りになるなら、戦いなぞ、机上で出来る!!
私「どうした? 終わりか?! 意外な結果に、声も出ないか! 」
男「! ・・・」
 男は黙って、手を振っただけだった。その周りに呪符は無い。
 ・・さあ! 反撃開始だ!!

 私は呪符を浮かべ、森と契約し、若者と猟犬に、攻撃を命じた。
 男の山犬は攻撃直後で、舌を出してあえいでいる。
 今回のアタックは通る、そして、山犬が回復しても、もうアタックには来ないだろう。
 終わりの合図に、手を振って見せた。
 男の前に呪符が浮かぶ。そして、男の顔が歪む。
 ・・・男の場には、山が3つどうやら‘マナ’不足で打てない呪文を引いたようだ。
 苦虫を噛み潰したような男の顔。 ・・・しかし、攻撃を宣言した!
 山犬が、吠えながら襲い掛かる! 削り合うと言うのか?!
 意外な行動に、若者も、猟犬も対処できない。 
 再び、右腕で山犬の牙をふさぐ。 ・・・骨を削られる嫌な音が響いた。
 苦痛に顔を歪め、男を見る。男は引きつった笑みを浮かべ、あごをしゃくって見せた。

 ・・・さあ、私の番だ。この腕のお礼はさせてもらう!
 山と契約し、引き当てたのは、再びあの禁呪“励ましの声”だった。
 これで、全員攻撃をしても、私が攻撃を受けることは無い。
 しかし、やつの呪符が気になる。
 ・・・考えた末、山犬では死なない、若者を護衛に残し、猟犬だけを攻撃させた。
男「・・・臆病者めが!」
 男は、はき捨てるように言い、自分の体で猟犬の牙を受ける。
私「勇猛果敢な結果、‘マナ’不足に陥る、いい例を見せてもらったのでね」
 皮肉な笑みを浮かべて終わりの合図に手を振る。
男「小僧! ・・・その台詞を忘れるなよ!!」
 男は山と契約し、無謀にも山犬を攻撃させた!
 ・・・どういうつもりだ?! 手元の呪符に、何か’仕掛け’でも有るのか?!
 訝りながらも、私は若者に頷いて見せる。・・・いざとなれば、禁呪がある!
 守って見せるさ! 若者は、山犬に強かに牙を立てられつつも、ハルバードの一撃で、それを葬り去る。
 山犬は、一瞬びっくりしたような、ほっとしたような顔をして、消えていった。
 男は黙ったまま、二匹目の山犬を呼び出し、手を振った。
 私は、呪符を浮かべつつ、いまの犬の表情が気になっっていた。
 召還された者たちは、己の意思と関係なく、術者に使役されるのだろうか?
 私が感じている、若者や猟犬への信頼も、幻想なのだろうか? ・・・と。


次章に続く










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