第2章 クエストの1 「とりあえず、迂回、・・・ですか?」 「・・・だな。他に手がない。」 私と若者は、『イーター・ザ・ワールド』の居るシヴァ山を目指し、旅立った。 ・・・が、目指すシヴァ山の裾野には、赤の国が広がっている。 彼らにとって、活火山のシヴァ山は聖地なのだ。 まともにぶつかっては勝ち目がない。 ぐるりと回りこみ、人家の切れた所から山頂を目指すことにした。 ドレイクが時折、上空から影を落とす。 そろそろ人類の領域から出ようとしているのだ。 ここから先は、赤の属と出会う可能性は低くなる。 代わりに、ドレイクや火蜥蜴、ドラゴンに襲われる可能性が、ぐっと増えるのだ。 ・・・そう、ドラゴン、である。 このシヴァ山は、ドラゴンの生息地として、名が知れている。 『イーター・ザ・ワールド』以外にも、伝説クラスのドラゴンがゴロゴロ居るのだ。 彼らの領域に許可なく浸入すれば、すぐさまあの世に誘われるだろう。 私は、交易商から手に入れた古地図で、竜主の領域を確認しつつ、慎重にそれを避け、未確認の領域を探索する事にした。 ・・・それが聞こえてきたのは、ある竜主の領域からだった。 かん高い、・・・甘えるような泣き声。 間違いなく赤ん坊の声だ。 ・・・贄として捧げられた子なのだろう。 無視して立ち去ろうとした私に若者が食って掛かった。 「どうして助けないんです?! 赤ん坊に罪はないんですよ!!」 「・・・どうして助けなきゃならん? 贄を出すのは、神聖な儀式の一部だろう?」 「それは、大人の事情です! あの子には関係有りません!!」 言い争いは5分に及んだ。 ・・・あのおっさんの気持ちがわかる気がする。 本当に、理想主義な事だ。白の属の言い分は。 ・・・、聞いてて反吐が出るぜ!! 結局、私が折れて、(このまま言い争う事の方が、危険を呼び寄せると判断した)慎重に、泣き声の発生源に向かって、進むことにした。 ・・・若者には言わなかったが、私は、危険を呼び寄せる音源を絶つ事も、考えていた。 次章に続く |