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我を呼ぶ声

第2章 クエストの8

第12ターン
 男の顔に焦りの色が浮かぶ。
後1度、我が軍が殴れば、奴の命は消え去るからだ。
 奴が生き残る為には、このターンの内に、私を倒すしかない。
・・・しかし、現状の奴の軍では、それは不可能だと思われた。
「・・・頼みが、有る」
 男は、従者の方を見、搾り出すように言った。
『・・・、命乞いか?』
 不遜な私の物言いに、男の額に青筋が浮かぶ。
しかし男の発した台詞は、
「・・・そうだ」
だった。
「我は、この子の為に、生きねばならぬ。
如何しても、我の命を欲すならば仕方なし。
それが勝者の権利ゆえ、従おう。・・・が、せめて、
儀式を教授する間、猶予を頂けぬか?」
 ・・・儀式? 台詞の意味を考えようとした、私の思考を
甲高い声が遮った。
「父上! 敵に命乞いなど!!
・・・来い! 侵入者どもめ! 我が相手だ!!」
 従者が、懐から呪符を取り出しつつ、叫ぶ。
が、男がその手を押えた。
「ランディ! ・・・、ふがいない父を責めるのは、解る。
が、これは、神聖なる決闘だ。焔の神官たる者が、
決闘の邪魔をしては、いけない。」
 静かだが、力強い声だった。
ランディと呼ばれた若者は、雷に打たれたように、シュンと、
なった。
『・・・解った。戦う意思が無いのなら、まず、召喚した軍を
還して貰おう。』
 私の台詞に、白の族の若者が、何か言いたげな、視線を
送ってくる。
チラリとそっちを見て、少し、台詞を言い足した。
『・・・それから、儀式ってのが、生け贄を必要とするものなら
見過ごすわけにはいかん。・・・とさ。』
 そういって、若者の方に、顎をしゃくって見せた。
焔の親子は、互いに顔を見合わせ、・・・そして、さも可笑しそうに
笑い出した。
 侮辱と取ったのだろう。白の若者が、カッとなって怒鳴る。
「何が可笑しいんです?! 赤子を生け贄に捧げる儀式なんて
絶対にさせませんよ!!」
 男は、笑いすぎて出た涙を拭いながら、
「いや、すまんすまん、あの声の事だな? 確かに赤子の声だが
ヒトのものではない。ましてや、贄に捧げる事など、有り得ない。」
と、言った。

 それから男は、召喚した者たちを還し、作法通り、呪符を私に
差し出した。
・・・なるほど、決闘を神聖な儀式と捉える、焔の神官、か。
 私も、召喚した者達に礼を述べつつ、彼らを還し、神官の呪符を、
持ち主に返した。
これも作法だ。門下に下った者の呪符は、奪ってはならぬしきたり
である。

 謝辞を述べる神官と、しばらく話しをした後、許可を得て、儀式を
見せてもらう事になった。


次章に続く。

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