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我を呼ぶ声

第2章 クエストの13

 竜主は相変わらず、中央で、寝たふりをしていた。
俺たちは、撃って出ようと、目で合図を交し合う。
 そして再び、ホールに向き直った時、竜主は、突然頭をもたげ、
入口を振り返った。

 見る見る竜主の全身から、殺気を含んだオーラが放たれる。
その顔は、怒りに歪み、口元からは、鋭利な牙が、姿を覗かせていた。
・・・、侵入者がいるのだ。・・・俺たち、以外の何者かが。

 やがて、俺たちの耳にも、それは聞こえてきた。
聞き覚えのある、赤子の鳴き声のような音・・・。
ドラゴンの幼生!
 侵入者達は、どこで手に入れてきたのか、ドラゴンの幼生体を、
連れて来ていた。

 竜主が、一直線に出口に向って疾走る。もはや我々のことは
眼中にないようだ。
俺たちも、そっと、後を追った。
 洞窟の入口まで出ると、竜主の大きな背中が見えた。
広げた翼でバランスをとりつつ、斜面を降りていく。
その下方、50M位の所に、幼生体が見える。
杭に固定されているようだ。
 しかも、幼生体は、かなり弱っているらしい。体の至る所から
血が流れ出している。

 ・・・どうやら、彼らは、幼生体を囮にし、その隙に竜主の財宝を
くすねようと言う腹らしい。
男が数人、洞窟に忍び込もうとして、我々と鉢合わせを
したからだ。

 竜主は、侵入者に対する怒りと、警戒、そして、同属の
幼生体に対する、相反する感情に戸惑っているようだった。
 つまり、幼生体を、侵入者と見るか、仲間と見るか、・・・である。

 一方、我々も選択を迫られていた。
侵入者を敵とするか、(当初の予定通り)竜主を敵とするか、
・・・逃げるか、で、ある。

 三者三様の、危ういバランス。
だが、均衡は長くは続かなかった。
 男達が、幼生体に何をしたのかを察したニックが、にこやかに
笑いながら、彼らの一人に近づき、渾身の力で、殴り飛ばしたからだ。

 剣を抜く残りの2人、それとほぼ同時に、茂みからクレイン・クロスボウが、
竜主に飛んだ! ・・・面白い、竜主と俺たち、2つとも敵にまわして、
生きていられると思うなよ!


次章に続く。

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