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我を呼ぶ声

第2章 クエストの19

 我々の目指した山頂は、そこになかった。・・・そう、
山頂そのものがなくなっていたのだ。何もない空間に竜主が、
ただ竜主のみが、存在していた。
 私が彼から得られた答えは、『そうダ』『知ラン』『キエロ』の
3つだけだった。

 最初の答えは、名前を聞いた事への、2つ目の答えは、次元移動の方法、
3つめは、私が次の質問に移ろうと、口を開きかけた事への答えだった。
(後になって知ったことだが、呑世竜主は、存在自体が、周りの空間を歪め、
どこかへ消し飛ばしてしまうらしい。最期の警告は、領域を侵したことを咎めた、
というより、我々を消し飛ばさない為の配慮だったようだ)

 ・・・だが、警告は、少しだけ遅かった。呑世竜主の姿が瞬いて見えたとたん、
目がくらむような白光と、それを切り裂く鋭い闇の軌跡を目にした私は、
足元の支えを失い、奈落に飲み込まれていった。


 ・・・あと1週間ちょっとで、約束の期限が来る。・・・1度村に戻らねば。
うんざりするような使命感のみが、意識を覚醒させる手がかりだった。
酷い頭痛と吐き気を感じながら、私は頭を起こし周りを見渡した。
 まさかと思ったが、聞こえて来るのは、潮騒らしい。
・・・確かに塩の匂いがする。どこだ、ここは?
『・・・リック?』
 ・・・返事はない、頭痛を伴う光がピンホールのように視界でフラッシュする。
痛む頭を抑え、周りを見回す。
 風景に見覚えはない。ありがちな海岸線と砂浜だ。
竜主も、リックも、・・・あのシヴ山すら、私の視界に入ってこなかった。

 一体、どれくらいの時間がたったのだろう。私は不安に襲われ、
腰の呪符を確認した。・・・ある。よかった、盗まれていない。
 この呪符が無ければ、私はただの肉の塊り、恰好の獲物だ。
あのゴブリン達にすら、たやすく殺られてしまうだろう。

 とりあえず、遠くに見える、街らしき場所を目指し、歩き出す事にした。


次章に続く。

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